消費電力39%減の有機EL、LGが量産拡大へ。iPhoneの電池持ちはいつ変わる

K-Display 2026のLGディスプレイ展示ブースとTandem OLEDの展示 iPhone
LG Display's Booth at K-Display 2026


スマホでいちばん電気を食っているのは、実は画面です。電池持ちの話は最後にだいたいそこへ戻ってくる。その画面そのものを省エネにしてしまう技術が、ようやくスマートフォンの手前まで来ています。しかも削減幅が39%。数字だけ見ると、けっこうな事件ですよ。

発光層を積み重ねたら、消費電力が39%減った

韓国ソウルのCOEXで7月22日から24日まで開かれているディスプレイ見本市、K-Display 2026。その前日に行われた業界向けフォーラムで、LGディスプレイのCTOであるチェ・ヨンソク氏が同社のタンデムOLEDについて講演しました。

タンデムOLEDというのは、有機ELの発光層を1層ではなく2層以上に積み重ねた構造のこと。同じ明るさを出すのに流す電流が少なくて済むので、その分だけ消費電力が下がります。おまけに1層あたりの負担が減るぶん、パネルの寿命は2倍以上に伸び、焼き付きにも強くなるとのこと。

ディスプレイビジネスフォーラム2026で講演するLGディスプレイのCTO

同社が示したのは、6.7インチのパネルを基準にした比較です。従来のシングルスタック有機ELと比べて、消費電力がおよそ39%下がるという結果。さらに分かりやすいのが駆動時間の話で、電池容量が同じ条件でオンデバイスAIを動かし続けたときの持続時間が2.6時間から3.9時間へ伸びたと説明されました。約1.5倍です。

なぜ今このタイミングでAIを引き合いに出すのか。理由はシンプルで、端末の中でAIを動かすと消費電力が跳ね上がるから。演算側が電気を食う時代になったので、画面で削れる分は削っておきたい、という話ですね。CTOは、AI時代のディスプレイ成長を牽引するのはタンデムだと語っています。

タンデムOLED|電池を増やさずに電池持ちを伸ばす画面

提供元 LGディスプレイ(韓国)
仕組み 有機ELの発光層を2層以上に積層し、少ない電流で同じ明るさを出す
主な特徴 6.7インチ基準で消費電力が従来比およそ39%減。寿命は2倍以上で焼き付きにも強い
すでに採用されている製品 M4以降のiPad Pro、車載ディスプレイ、一部のノートPC向けパネル
向き・不向き 明るさと電池持ちを両立したい端末に有利。層が増えるぶんコストは上がりやすい

量産はもう始まっている。ただし当面は車とPCから

LGディスプレイはこの技術を2019年に世界で初めて商用化し、2023年に第2世代を量産へ乗せています。そして今年発表された第3世代は、直前の世代と比べてさらに消費電力を18%削減し、最大1,200ニトの輝度と15,000時間の寿命を実現したとされます。2026年内に量産を始める計画で、最初に載るのは車載パネル。そこからノートPCやタブレットといったIT向けへ広げていく順番です。

つまりスマホは、まだ行列の先頭ではありません。とはいえK-Display 2026の展示では、13インチのタブレット向けや1.96インチのスマートウォッチ向けと並んで、7インチのスマートフォン向け有機ELパネルもモバイル領域の目玉として並べられています。残りの製品ラインにも技術を広げていくというCTOの発言と合わせると、モバイルは順番待ちの列にきちんと入っている、という読み方ができます。

7インチという数字がまた意味深です。今のiPhone 18 Pro Maxクラスでも6.9インチ前後。画面が大きくなれば当然、表示に使う電力は増えます。そこをタンデムで相殺できるなら、画面拡大と電池持ち改善を同時にやれる計算になりますね。

iPhoneに載るのはいつになりそうか

Appleユーザーにとって、タンデムOLEDはまったくの未知の技術ではありません。2024年のM4搭載iPad Proがすでにこの構造を採用していて、あの明るさと黒の締まりは積層あってのものでした。問題は、それがいつiPhoneへ降りてくるか。

背面カメラが見えるiPhoneの本体イメージ

韓国のThe Elecの報道をもとにした海外メディアの伝え方では、Appleが検討しているのは青のサブピクセルだけを2層にする簡易的なタンデム構造だとされています。赤と緑は1層のまま。フル積層より安く仕上げつつ、劣化の早い青だけを手厚くするという発想で、コストと効果のバランスを取りに来た形です。供給元をサムスンディスプレイにするかLGディスプレイにするかはまだ決まっておらず、搭載は早くても2027年より後、2028年以降になる見通しと報じられました。まずはProから、という予想も添えられています。

というわけで、この秋のiPhone 18 Proには間に合いません。今のAppleが電池持ちを伸ばすのに使っている手は、あくまで電池セルそのものを大きくする方向と、チップ側の省電力化です。薄型モデルでも容量を積み増して弱点を埋めにいくという話が出ていますし、折りたたみモデルの電池容量もかなり攻めた数字が伝えられています。物理で殴る、という状態がしばらく続くわけです。

【モノログ的視点】電池を大きくする競争が、そろそろ次の段階に入る

正直に言うと、この手の部材ニュースはふだんそこまで盛り上がりません。パネルの世代が変わったところで、店頭で触って分かるものでもないですし。でも今回は素直にワクワクしています。だって電池を1グラムも増やさずに、画面まわりの消費電力を4割近く削れるという話ですよ。これはスマホの設計思想が変わるレベルの余白です。

ここ数年、電池持ちを伸ばす手段はほぼ容量アップ一本でした。その結果どうなったかというと、本体は厚くなり重くなり、薄さを取ったモデルは電池持ちで割を食う。あちらを立てればこちらが立たず、を延々やってきたわけです。そこへ画面側で4割浮きますと言われたら、設計の自由度が一気に戻ってきます。同じ電池のまま持ちを伸ばしてもいいし、持ちを据え置いて薄くしてもいい。7インチの大画面に振ってもいい。この選択肢の広がりが楽しいんですよね。

個人的にいちばん刺さったのは、AIの駆動時間が2.6時間から3.9時間になったという実験値です。オンデバイスAIって、便利なのに使えば使うほど電池が溶ける機能の代表格でした。それを画面側の省エネで支えるという発想は、スペック表の見栄えではなく実際の使い勝手に効いてくるやつです。ここが1.5倍になるなら、AI機能を遠慮なく使える端末がようやく現実味を帯びてきます。

日本のユーザー目線で言えば、体験できる順番はiPad、次にノートPC、そしてiPhone。iPad Proのあの画面を見たとき、これがポケットに入る日が来るのかと思った人は多いはずで、その日が具体的な年数として見えてきただけでも収穫です。青だけ積層という簡易版になりそうなのは少し欲張りたくなる部分ですが、価格に跳ね返らない範囲で確実に入れてくるほうが、結局はみんなが恩恵を受けられる。次に買うiPhoneの電池持ちは、容量ではなく画面で決まるようになる。そんな時代の入り口を今見ている気がして、秋の新型を待つ楽しみがひとつ増えました。

情報参照元: LG Display・K-Display 2026 プレスリリースSeoul Economic Daily・LG Display CTO: Tandem OLED Boosts On-Device AI Runtime by 50%The Asia Business Daily・Tandem OLED Is the Key Technology for Power Efficiency in the AI EraWccftech・LG’s Third-Gen Tandem OLEDGSMArena・Apple is considering tandem OLEDs for 2028 iPhones/画像: LG Display/iPhone Mania

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